『ほとけを支えるー蓮華・霊獣・天部・邪鬼ー』展に行く

 

飛鳥時代に日本に伝えられた仏教。
日本の美術史において仏教美術は多大な影響を与えてきた。

西洋美術において神々に備わるアトリビュートの数々がイコノロジーの目を啓いたように、仏教美術においても御姿のみではなく持物や周辺に添えられた表象が鑑賞する側の理解を助ける。
例えば、手の形に注目すると、それぞれが特徴的な組み方であることが見てとれる。
これを印相(いんぞう)といって、どのような仏か、どのような利益が得られる仏であるかといったことが分かる。
それでは足元についてはどうだろう。

本展では「ほとけを支える」と題されたように、仏が鎮座する台、移動する乗り物、調伏し踏みつけにしたものに焦点を当てたコレクションが公開されている。
主要な展示をピックアップしよう。

文殊菩薩像


文殊菩薩像 絹本着色 日本・鎌倉時代 14世紀 根津美術館蔵

 

「三人寄れば文殊の知恵」でおなじみ、文殊菩薩は智慧を司る仏である。
獅子に乗る理由は「獅子吼」の表現だと考えられる。
真理を説き、人々の迷いをうち払う説法は、百獣を従わせる勇猛な声によってなされる。
このことを仏教で「獅子吼」といい、智慧は伝えられるべきものであるから、文殊菩薩は獅子に乗る。

普賢菩薩十羅刹女像


普賢菩薩十羅刹女像 絹本着色 日本・平安時代 12世紀 根津美術館蔵

 

慈悲を体現する普賢菩薩は白象に乗る。
普賢菩薩は、歴史的には女人成仏を説いた法華経に登場したため、女性からの信仰を集めるとされる。
一方、説話に登場する白象は、釈迦の生母となる摩耶夫人の夢に現れ、夫人の腹に入り釈迦の生誕の予兆となったという。
慈悲や寛容、母性の象徴として普賢菩薩の乗り物となっているのだろうか。

降三世明王像


降三世明王像 絹本着色 日本・鎌倉時代 13世紀 根津美術館蔵

 

降三世明王は密教が生んだ五大明王のうちの一尊。
密教はヒンドゥー教の要素を取り込んだ仏教であり、神秘主義的特徴を持つ。
その修法の難解さを背景に、視覚的理解を促す密教美術が発展した。
降三世明王が踏みつけにするのは大自在天とその妻である烏摩妃、ヒンドゥー教のシヴァ神とパールヴァティである。
「仏教のほうがえらいぞ」という教えか、異教の主神を足蹴にする図からは仏教の激しい一面が垣間見える。

 


 

展示の後半では、壁一面を埋める金剛界八十一尊曼荼羅が鑑賞できる。
一目で全体を掴むのは大変だが、展示では解説図が併設されているのでじっくり取り組むことができる。
本展の目玉だろう。

 

「ほとけを支える」事物に焦点をあてたテーマ展示といっても、仏教美術入門ともなりうるコレクションがピックアップされている。
また、根津美術館には庭園もあり、散策の楽しみがある。
仏画鑑賞の帰りに深山幽谷の趣ある緑と仏像めぐりに興じてもいいだろう。
是非、この機会に仏画、仏像の魅力に触れてみてほしい。

 

 

『ほとけを支えるー蓮華・霊獣・天部・邪鬼ー』
開催期間/2017年9月14日(木)〜2017年10月22日(日)
会場/根津美術館  東京都港区南青山6-5-1
開催時間/10:00〜17:00(最終入場時間 16:30)
休館日/月曜日 ※9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開館、9月19日(火)、10月10日(火)は休館