<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則

著者:ケヴィン・ケリー (著),‎ ‎ 服部 桂 (翻訳)

出版社: NHK出版

発売日:2016/7/23

 

インターネットが世界を変えた―
今から振り返れば誰もが認める事実だ。
グーテンベルグの印刷術や鉄道輸送の発達のような、教科書に載るレベルの歴史的転換と急速な生活の変化を私たちは目の当たりにしてきた。それも、この四半世紀で。

とはいえ、初期のインターネットは学術的運用の色合いが濃く、商用利用についても禁止されていた。
そのため、市場に解放されたのちも、すぐに熱狂をもって迎えられたわけではなかったのだ。

人々が価値に気づき始めてからは90年代のドットコム・バブル、ニューエコノミーの幻など、苦い経験も得ることになったが、市場の成熟とともにインターネットは生活に根付き、欠かせないものとなった。

もしもインターネットの現在を知った上で過去に戻れるならば、無限の可能性が広がっていると感じるはずだ。そのことを思って後悔することもあるかもしれない。あのときに戻れれば…!

<不可避>のイノベーション

しかし、本書を読めば悲観することもなくなる。
まだ後悔には早い。まさに今こそが、変化の節目なのかもしれない、と。

人類の歴史の中で、何かを始めるのに今ほど最高の時はない。
今こそが、未来の人々が振り返って、「あの頃に生きて戻れれば!」と言う時なのだ。
まだ遅くはない。

著者のケヴィン・ケリーはWIRED創刊編集長だ。
インターネットの前線を追ってきた彼にとって、テクノロジーの変化は<不可避>の性質をもつものとして映る。
<不可避>とはつまり、あるブレイクスルーが起きて大枠の方向性が定まると、以降のテクノロジーはその方向性に従って開発されるということだ。
今ある<インターネット>とは別の形であっても、<インターネット>的なるものが登場することは<不可避>だった。
とすれば、次世代のテクノロジーを決定づけるトレンドを読み解くことで、「<インターネット>の次に来るもの」が見えてくるだろう。

12のキーワード

著者は未来を決める<不可避>なトレンドを12の動詞に分けて挙げる。
それぞれのトレンドは互いに重なり合い、影響を及ぼすと筆者は主張する。そのため、チャプター間で似たエピソードが散見され、冗長さを感じることもあるかもしれない。
しかし、冗長さは無駄を意味しない。
12の動詞がどのように関係し、技術やサービスとして具体化するのかということを注意深く拾い上げるのも、本書を読む上での醍醐味だ。
12の動詞の一部は以下のようなものだ。

 

BECOMING

インターネットはインターネットを超えた何かに<なっていく>。
未来にはユートピアもディストピアもない。
今が、広く開かれたフロンティアのスタート地点であることだけに向き合えばいい。

 

COGNIFYING

AIと組み合わせ、テクノロジーに認知の能力を備えることでツールの用途は広がっていく。
労働の在り方は変化するが、ロボットと競争するのではなく、協調することが重要になる。

 

FLOWING

コンテンツの在り方は流動的になる。
ソフトがハードを凌駕し、即時性や信頼性、アクセス可能性などがコピーされたコンテンツに新たな付加価値を与えるようになる。

 

SCREENING

情報へのアクセスは紙面から端末の画面、スクリーンへと移行していく。
娯楽やニュースなど、あらゆる情報は場所を選ばず、スクリーンを通してアクセスできるようになる。

 

ACCESSING

クラウドによってアクセスの制約が解かれる。
分散型プラットフォームが主流となり、消費者は所有権からアクセス権へ意識の比重を置くようになる。

 

昨今のWebサービスやガジェットに触れたことのあるわたしたちにとって、大なり小なり、体感で理解できる概念ではないだろうか。
それはおそらく、いくつかの企業は既に未来を見据えたプロダクトを提供し始めているということだろう。

未来へのヒント

ケヴィン・ケリーのヴィジョンは、ともすれば楽観的だ。
しかし、彼は変化に伴うデメリットに目をつぶっているわけではない。
新しいテクノロジーが生まれ、未来が変化していくことは<不可避>なのだから、悪い面を抑えつつ、良い面を伸ばしていくよりほかないというのが彼の見解だ。
テクノロジーのフロンティアに商機を見出そうとする読者には、ヒントが転がっているかもしれない一冊だろう。